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東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2828号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「一、原判決を取り消す。二、昭和四三年五月二四日、被控訴会社の定時株主総会においてなされたつぎの決議(一)ないし(三)はこれを取り消す。(一)直江津海陸運送株式会社定款の一部をつぎのとおり改正する。すなわち第一〇条を第一一条とし、以下順次一条づつ繰下げ、第九条のつぎに第一〇条として『本会社の株式を譲渡するには取締役会の承認を要する。』を加える。(二)昭和四二年度営業報告書、貸借対照表、損益計算書ならびに利益金処分案を承認する。(三)監査役任期満了に付、二名選任、小出幸作、滝沢善勝の重任とする。三、訴訟費用は第一および第二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠関係は、左のとおり付加訂正するほかは、原判決書事実摘示欄の記載と同一であるからこれを引用する。

一、原判決書八丁表八行目に「右両名」とあるつぎに「ほか五名」を加える。

二、証拠(省略)

理由

一、当裁判所は左のとおり付加するほかは、原審裁判所と同一の理由により本件請求を失当と判断するので、原判決書理由欄の記載をここに引用する。

(一)  原判決書一三丁表三行目に「協議を妨げ」とあるつぎに、「かつ、株主名簿閉鎖期間中、本件株主総会開催前に、訴外中村和子ら七名に働きかけて株主名簿登録住所の変更と同名簿登録印の改印とを被告会社に届け出させたうえ、右総会において右七名名義の株式の議決権の行使を自己に有利にしようとする目的をもつて、右議決権につき中村和子、同徹立および同拓立の三名には野原正に対する各委任状を、中村昭一、山崎久子、同久和および同純一の四名には石黒満雄に対する各委任状をそれぞれ提出させ」を加える。

(二)  同丁表四行目に「できない。」とあるつぎに「(原審証人逸精の証言((第一および第二回))中には前記中村和子ら七名名義の株式については、本件総会前からいわゆる名義貸株式であつて、真実は亡丸山実の遺産である旨控訴人から聞いたという供述部分があり、原審および当審証人野原正の各証言および原審における右同人の被控訴会社代表者としての本人尋問の結果中には、本件株主総会の前か後かは明確ではないがその頃控訴人が前記趣旨の主張をしている事実を聞いている旨の供述部分があり、また原審および当審における控訴人本人尋問の結果中には同人は本件株主総会前から当時被控訴会社の代表取締役であつた野原正、同社の常務取締役であつた石黒満雄および同社の庶務課長であつた滝沢逸精に対し、前記株式は名義株であつて亡丸山実の遺産に属する旨申し入れたという供述部分がある。しかしながら控訴人が以上のような主張や申入れをしていたからといつて直ちに被控訴会社が前記株式は亡丸山実の遺産でその相続人らの共有に属することを確知したとすることはできないことは明白である。つぎに、原審証人三木遂の証言(昭和四五年七月三〇日、第一回)中には控訴人主張のように被控訴会社が中村和子ら七名に働きかけて、株主名簿登録住所の変更と株主名簿の登録印の改印とを届け出させたことを窺えるような供述部分があるが、同証人の原審における昭和四六年五月六日の証言(第二回)によれば前記供述部分は言い違いに基づくものと考えられるからこれを証拠として採用し得ない。)」を加える。

(三)  原判決書一四丁裏四行目に「認められる」とあるつぎに、「ほか、これらの使用人は官庁あるいは会社という組織体の一員として上命下服の規制を受け、上級者(窮極においては代表者その他執行機関)の意図にいささかも背くことができないようになつているのであつて、これは個人対個人における事務委任に基づく代理関係などとは著しくその実態を異にし、これらの職員が出席することは右団体の代表者が出席することと同視して差し支えない程のものである」を加える。

(四)  原判決書一五枚目表一三行目末尾に「そればかりでなく、成立に争のない乙第一号証、原審証人滝沢逸精の証言によれば、本件株主総会における出席株主の株式数は委任状によるものを含めて控訴人主張のとおり百三万余株であつたことおよび訴外船木セツは亡船木義一の相続人船木智子の不在者財産管理人として本件株主総会に出席しようとしたがその出席資格を証する委任状の提示を求められて、そんな面倒なことならば出席しないと言つてそのまま帰つたことが認められ、これらの事情からすれば、右不在者の権利に属していた僅か一、六八〇株の株主権の行使が右総会の決議に影響が及んだとは考えられず、また、訴外船木セツによる右株主権の代理行使に当つても同人において議案の内容に重大な関心を寄せて評決に影響を与える言動をしたであろうとも思えないので、仮に船木セツの右代理議決権行使が控訴人主張のように制限されたとしてもそれは、本件総会決議を取り消すことができる程の事由とはいえないものというべきである。」を加える。

二、以上の次第で控訴人の請求を棄却した原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条および第八九条を適用して主文のとおり判決する。

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